双子の灰羽は、白い髪の色を除いたすべてが異なっていた。背の高さ、髪の長さ、そして羽の色さえも。そう、一人は罪憑きだった。
レキやラッカのことがあったからだろう、私をはじめとしたみんなが、それでも二人を温かく迎え入れた。昔の私のように恐れることはなかった。
二人は、繭から生まれてからしばらく目を覚まさなかった。その背から羽が生えるまで。
はじめてのできごと、なにかいやな予感はあった。それが、まさか罪憑きの新生子が産まれるなんて……。
「あなたたちの見た夢を教えて」
短髪の背の低い少女はクウに似て、一目では少年と間違えてしまうかのような灰羽だった。もう一人にすがりながら、こちらをにらみつけるようにしていた。おびえているようだ。それでも、彼女は一番に私の問いかけに答えてくれた。
「あたしは、雪の中を歩いていて、いつのまにか砂漠にいたんだ。一面砂で燃えているような暑さのなかで、雪が降ってたんだ」
「不思議な夢ね」、と感想を述べると、すぐに名前を考えた。
彼女の名前は砂の中の雪、砂雪(サユキ)となった。
「あなたは」
長身、長髪、サユキとは正反対のみやびやかな風情をかもしだす少女は、歌うように語った。
「私は、ええと、そう。雪の中にいて。花を見つけたんです。それから……」
「それから?」
そのつづきはないだろう。罪憑きは夢の内容を忘れる。しかし、彼女が語った内容は、そこまで詳しくないにせよ要点は得ていた。サユキといい勝負の内容だ。
案の定、彼女の口からそれ以上は語られなかった。
罪憑きの少女の名前は雪の中の花、雪花(セツカ)となった。
セツカの黒い羽は、今はラッカがとってきてくれた薬によって、もとの灰色に染められている。二人が寝込んでいる時、ラッカは、すすんでこの役を買って出た。自分だけで看病するとも言ったが、そこはみんなでやろうと説得した。
ラッカは、レキのようになりたいんだろうと思う。でも忘れないで。私達がいるってことを。
私の言葉に、ラッカはハッとした顔をして、ありがとうって言ってくれた。ごめんなさいと謝られるより幾分うれしかった。
羽が生え熱も下がり、名前も得た。
なし崩し的に光輪係となったヒカリから授けられた光輪は、問題なくくっついた。カナは、いつの間にかサユキと波長が合うようになり、よく時計塔やオールドホームを探検している。以前に比べれば、人見知りもずいぶんとましになった。
しかし、セツカの存在だけが、このうまくいっている雰囲気のなかで、一人だけ別世界にいるように浮いているように思えた。
なんとかしなければ。そう思うのだけれど……。
「あ、光輪が」
ベットに横たわっていたセツカがつぶやいた。ちょうど私が彼女を看病していたからだ。セツカは生まれながらにして身体が弱かった。今も軽い風邪をこじらせている。
「ごめんね」
私はそれだけをつぶやくと、そっとゲストルームから抜け出した。
ああ、レキは怒るかなぁ。そりゃぁ怒るわよね。途中でほうっぽりだしたようなものだもの。
なんでこんな時に巣立ちの時がくるんだろう。まだ何も安心できないのに。
レキが呼んでいるのかもしれない。あとはラッカたちに任せようって。ラッカたちならきっと大丈夫だって。
だとしたら……。
ああ、正反対のことを考えている。
レキが怒って? 呼んでいる? そんなのわかるはずないじゃない。
私は、心の奥底で安心しているんだろう。きっとそう。
だから。
あとはお願いね。
西の森の奥の遺跡。
空から届く日差しはまぶしく、私を迎え入れてくれるようだった。
静かに祈りながら、眠るようにまぶたをそっと閉じた。
作者 樹 さん
作者ホームページ うたかた書店
あとがき
巣立ちという言葉を聞いてどう感じるでしょうか。
原作の意図から考えると、巣立ちとは祝福された灰羽の勲章。喜ばしいことに他ならないのです。
ですから、これをみて悲しいと思わないでほしいというのが私の願いです。
罪憑きや巣立ちなど、同人としては描きにくいところかもしれませんが、無謀にも挑戦。
今後どう収めるか自分で心配になってきます。